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チェーンストアエイジ 2003年9月1日号掲載
特集:日本のチェーンストア1000社ランキング巻頭レポート
小売業界の主役が代わる−外資、商社の参入と商業集積の発展で揺れる小売業の未来像−

 大店法緩和にともなう大型店の急増と、バブル崩壊以降の消費の低迷という二大潮流を背景とした小売業の消耗戦は、依然として続いている。小売企業の業績は、リストラの成果で持ちなおすかに見えたが、再び低迷しつつある。しかし、その流れもここにきて、淘汰と再編という形で一つの節目を迎えようとしている。


GMSの退潮とSMへの傾斜

 まず明確になったのは、90年代まで小売業界をリードしてきた総合スーパー(GMS)での優勝劣敗の構図である。マイカルと長崎屋、寿屋、ヤオハンは破綻し、ランキングから姿を消した。ダイエー、西友も金融機関や外資の下で事業の再建中だ。
 これは、GMS相互の競争に加え、近年のランキングの動向からも明らかなように、衣料品や家電をはじめとして、力を付けた専門店チェーンの躍進に市場を奪われた結果でもある。勝ち組の企業でさえ、GMS業態では次の成長戦略を見出しにくい状況だ。
 その一方で注目を集めているのが食品スーパー(SM)業態だ。再建中のダイエー、西友ともに、食品を強化した店舗を、将来の主力候補の一つに据えているようだ。イオンも、自社ショッピングセンター(SC)の中核店舗としてのSM業態に注力する。
 SM業態は地場食材の調達が競争力のカギとなることから、地方ごとに群雄割拠の状態が続いてきた。しかし、比較的地域色の薄い首都圏では、大手GMSのSMへの傾斜を背景に、合従連衡が進む可能性が指摘されている。イオンはカスミとの提携を決めたし、ダイエーのSM戦略はかつての子会社であるマルエツに力を借りる形で進められている。
 こうした動きに深く関わってきているのが、総合商社と外資系小売企業である。ダイエーとマルエツの連携は、マルエツの大株主となった丸紅がバックアップしている。西友の再建には世界最大の小売企業であるウォルマートと住友商事がタッグを組んで支援している。住商は傘下にサミット、マミーマートも有しており、西友を含めた首都圏SM連合の構想を描いている。
 最近では英国の最大手小売企業テスコがシートゥーネットワークの買収で日本上陸を果たし、今後さらに買収先、出資先を増やしていく方針を打ち出している。日本での事業展開を新規店舗開発の形で進めてきたカルフールも、自前での展開が必ずしも順調でないことから、日本の既存小売企業の買収に方針を変更してくる可能性は十分ある。
 資金力のある外資や総合商社の動きは、日本の小売業の今後を大きく左右することになるだろう。


店舗の進化から商業集積の進化へ

 淘汰と再編の動きに加えて、小売業の進化の方向性も大きな転機を迎えている。これまでの小売りの進化は、品揃えや販売手法といった個々の店舗の進化であった。それに対して、今目立っているのは、複数の店舗の集合体である「商業集積」の進化である。
 GMSの直接の後継となりそうなのは、SMを核とした商業集積だと考えられている。ディスカウントストアやホームセンターとの組み合わせによるスーパーセンターや、衣料品専門チェーン、ドラッグストア、家電量販店などとの集積であるNSC(近隣型ショッピングセンター)が、その代表格だ。
 スーパーセンターやNSCは、SMと多彩な専門店が集積することで、GMSと同様のワンストップ・ショッピングの利便性に加えて、それぞれの店舗の専門的で奥深い品揃えも提供しようというものであり、これらの発展はGMSの退潮に拍車をかけるものと考えられる。
 商業集積のバリエーションは、日常的なショッピングの場であるスーパーセンターやNSCに加えて、映画館などのアミューズメント施設を加えたタイプ、丸の内や六本木など都心の再開発地域のショッピングゾーン、郊外のアウトレットモールなど、急速に広がりつつある。
 商業集積の発達は、個々の業態の進化や企業の戦略、業界再編の流れにも大きな影響を及ぼすだろう。そこに外資系小売企業や総合商社などの動きも加わり、これからの小売業の展開は、きわめて複雑なものとなりそうだ。


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