マイカル、長崎屋の経営破綻に象徴される総合スーパー(GMS)の凋落は、これからの日本の流通産業におけるショッピングセンター(SC)の存在感の大きさを、二重の意味で浮き彫りにしつつある。
一つには、GMSの生き残り戦略としてのSC展開である。消費の高度化にともなって人々のニーズが多様化した結果、商品分野ごとの品揃えの奥行きと専門性を欠いたGMSは、80年代中ごろから次第に集客力を失っていった。それを補うための方策が、GMSと各種の専門店を組み合わせたSCの展開であった。GMSと専門店の両者が、お互いの集客力を利用し合おうという発想だ。80年代半ばには、SCを形成しているGMSは全国に約500店と、GMS全体の3割程度に過ぎなかったが、2001年には全GMS中7割以上、約1,200店がSCの核店舗という形態をとっている。
この路線を最も明確に推し進めているのがイオンだ。国内外の有力他業態企業と連携し、自社グループで開発した郊外型の大規模SCに投入することで、SC全体の集客力を高めるとともに、賃料収入を稼いでいる。いまや、SCの開発・運営こそが本業で、従来からの小売業はSC展開のためのツールという観さえある。単体のGMSとして最強の収益力を誇るイトーヨーカ堂がSC事業にさほど積極的ではないのとは対照的だが、その他の大手GMSが軒並み経営破綻かそれに近い状況にある中で、イオンが業績を上向かせることができたのは、SC戦略の貢献が大きいものと考えられる。
SCのもう一つの存在感は、GMSの凋落を加速させるファクターとしてのものだ。SMを核店舗としたネイバーフッド型SC(NSC)の展開である。GMSの武器は、衣食住すべての分野にわたって日常的な商品を揃え、ワンストップ・ショッピングの利便性を提供できることにあった。それに対してNSCは、SMと衣料品専門チェーン、ドラッグ・ストアなどが集積することで、GMSと同様のワンストップ・ショッピングの利便性に加えて、それぞれの店舗の専門的で奥深い品揃えも提供できる。NSCの台頭は、GMSの存在意義をますます希薄化させることになる。
2001年末の段階で、SMを核店舗としたSCは700件弱と、GMS核のSCの数を大きく下回っている。これは、SMを主力とする企業が地域勢力にとどまっており、SCの開発・運営を進めるだけの企業規模、体力を持っていなかったためと考えられる。しかし一部の勝ち組SMでは、NSCの展開を加速させる動きが見られはじめており、これが今後の流通業界の大きな潮流となる可能性はきわめて高い。
GMS核SCとSM核NSCの競合が、今後どのようなかたちで推移するかは予想し難いが、いずれにしてもSCの形態が流通業界の次代の主役となることは間違いないだろう。
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