2004年の後半あたりから本格的になってきた原油価格の上昇は、05年に入るとさらに加速し、指標となるWTI(西テキサス産の中質油)の価格は、9月には一時的に1バレル(159リットル)あたり70ドルを超えた。これは、2005年の世界経済を振り返るうえでは、最も重要な出来事の一つである。
第三次石油危機は発生するか
原油価格の高騰というと、思い浮かぶのは1974年の第一次、79年の第二次の2回にわたる石油危機だろう。今回の上昇局面では、原油価格は70ドルに達しており、その水準は70年代の石油危機の際の価格を大幅に上回っている。
しかし、当時と現在では、物価水準も為替レートも大きく異なっている。過去の原油価格を現在の物価水準と為替レートに置きなおした実質価格でみると、第一次石油危機の際には20ドルから50ドルへの上昇、第二次では30ドルから100ドルへの上昇に相当していた計算になる(下図参照)。20ドルから70ドルに達した今回の上昇局面は、原油価格の水準で見ると一次と二次の中間ということになる。
ただ、経済や産業へのインパクトは、原油価格の水準や上昇率だけで決まるわけではない。第一次石油危機の際には、成長率がマイナスに転じると同時に、物価は1年で20パーセント以上も上昇した。多くの消費者がトイレットペーパーなどの消耗品の買い占めに走るなど、日本の経済、社会は大混乱に陥った。それに対して、第二次の際には、前回の経験を踏まえて企業や消費者が比較的冷静に対処できたことで、景気の落ち込みはあったものの、第一次ほどのインパクトはなかった。
そして今回はといえば、第一次のような不意打ちでもなく、第二次ほどの価格水準に達してもいないため、日本経済への悪影響は局所的なものにとどまっている。また、石油危機当時と比べて、企業や消費者の経済水準が大幅に向上したことで、原油価格の上昇に対する耐性が格段に強まってもいる。もちろん今後の原油価格の動向にもよるが、第三次石油危機と呼べるほどの衝撃が日本経済を襲う可能性は大きくはないといえるだろう。
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