不況脱出のチャンスだった2000年の春
昨年の暮れごろから、日本の景気は目に見えて悪くなってきている。この連載の第1回(昨年の4月号)で述べたトリプル・スパイラルの状態に再び陥ろうとしているのである。
トリプル・スパイラルとは、「需要後退」、「資産価格下落」、「信用収縮」の三つのシュリンク(縮小)現象が、相互に増幅させあってスパイラル的に進行していく状況(下図参照)を指している。バブル崩壊後の日本経済が、従来の不況とは比較にならないほど深刻な事態に陥ったのは、このメカニズムが働いたためである。
しかし、2000年初頭には、公的資金投入による金融システムの補強策により信用収縮は一応落ち着き、IT関連需要の盛り上がりも予想されていた。加えて、今でこそ「ネットバブル」だったと言われているが、株価は日経平均2万円台を回復していた。久々に、トリプル・スパイラルから抜け出せそうな状況が生まれていたのである。
(詳しくは昨年4月号の本稿「2000年の日本経済−トリプル・スパイラルからの脱出−」を参照のこと)。
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