「景気」という言葉、経済用語ではありますが、日常的によく使われる言葉でもあります。今回は、この「景気」について考えてみます。
景気は「仕事」の視点で語られる
「景気」という言葉は、「景気はどう?」というように、「調子」とか「元気さ」といった意味で使われます。とくにピッタリくるのは、「不景気でたいへん」といった感じで、お店や企業の調子、個人の場合でも、収入や仕事の調子がどうかを表す使い方でしょう。
ですので、景気の良し悪しは、モノやサービスの売れ行きが順調かどうかで判断されるのが普通です。これは、個々の人や企業にとってもそうですが、日本全体の景気という場合にもあてはまります。少し硬い言葉で言いますと、経済は需要と供給で成り立っているわけですが、「景気」とは、供給側の視点から需要の調子を捉えた表現だということができるでしょう。
2004年の景気を振り返ると
それでは、2004年の日本の景気はどうだったのかといいますと、薄型大画面テレビやDVDレコーダーなどのデジタル家電がヒットしたり、アメリカや中国への輸出が伸びたことで、90年代はじめのバブル崩壊以来、久しぶりに好調な年だったと言えるでしょう。
その一方で、企業は好調でも雇用や所得は十分に伸びず、好調の恩恵は個人にはあまり伝わらなかったという見方もあります。それに、調子が良かったのは一部の産業や企業だけで、多くの企業は引き続き厳しい状況にあるようです。そのため、日本の経済は最悪の時期は抜け出したものの、依然として好景気とは言えないという見方も出てきています。
景気の見方は変化する
ですが、そうした判断は、これまでの経験を基準にしたものです。数年たって振り返ってみると、2004年という年は、かなり景気の良い年だったと評価されることになるでしょう。それは、人口が減少に転じるこれからの時代には、景気を判断する基準も変わってくるからです。
人口が減り続ける時代には、たいていの商品やサービスでは、需要が減るのが当たり前になってきます。成長するのは、新しい商品やサービスを開発して新しい需要を生み出した一部の産業や企業に限られ、すべての企業が好調だというような局面は、ほとんど期待できなくなります。
その意味で、デジタル家電の登場で盛り上がった2004年の経済は、これからの時代の好景気の見本とも言うべき状況だったのです。時代が変われば、景気の見方も変わります。今は、まさにその変わり目にあると言えそうです。
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