人口減少時代が、いよいよ目前に迫ってきた。従来予想されていたよりも1、2年早く、今年、2005年が、日本の人口が最も多かった年、あるいは減りはじめた年として記憶されることになりそうだ。
とはいっても、前年からの変化自体はごく小幅なものに過ぎず、普段のビジネスや生活で、人口減少を実感する機会は、さほど多くはないだろう。地域によって人口の動きが相当異なっていることが、日本全体の動向を実感させにくくしている面もある。
下図は、2004年の人口増加率(10月時点の前年同月比)を各県別に示したものである。これによると、東北や山陰、四国、九州など多くの県では、すでに人口は減少しはじめている。かなり長期にわたって減少し続けている地域も多い。日本地図で、人口が減っている県を塗っていくと、国土の面積の8割以上が塗りつぶされることになる。
その一方で、沖縄、東京、神奈川、愛知、滋賀といったあたりが明確な増勢を維持しているのをはじめ、12の都県では、人口は依然として増え続けている。そして、それらの都県の多くが、人口が集中している地域であるため、日本の総人口のほぼ半数が、人口が増えている都県に居住している形になっている。減少している県においても、人口の多い都市部では人口増が続いているケースが多い。そのため個人のレベルでは、自身の生活空間において人口減少を経験している人は、依然として少数派にとどまっているのである。
店舗を構えた地域に立脚して事業を展開するリテールビジネスの多くにとっても、状況は同じだろう。商圏人口の減少に見舞われているのは、店舗数でみれば、まだ少数にとどまっているものと考えられる。しかし、人口が減少に転じるエリアは次第に広がってきている。特定のエリアで面的な展開を行うチェーンストアにとっては、展開地域の人口動態は、今後は、事業の存続をも左右する重要なファクターとなってくることが予想される。
チェーンストアが、家族経営の商店からシェアを奪って成長できた時代であればともかく、チェーンストアがすでに成長を遂げた現在では、人口が減少している地域で、事業規模や売上規模を維持していくことは、容易ではない。
人口減少がチェーンストアの経営に本格的に効いてくる時期は、地域によってかなり差があるものと考えられる。とはいえ、店舗を展開するドミナントエリアを簡単には変えられない以上、人口の減少にどう対応していくかは、次第に多くのチェーンストアに共通の課題として浮上してくるだろう。
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