ヴィトン、エルメス、シャネル。今の日本は、世界各国の高級ブランドの店や商品が花盛りです。この「ブランド」というのは、私たち消費者にとって、また企業にとって、どんな意味を持っているのでしょうか。
消費者にとっては「象徴」
消費者にとってのブランドの意味は、基本的には品質の証であり象徴だということでしょう。自分ではよくわからなくても、有名なブランドの商品であれば、品質は高いはずだと判断できます。
加えて、周りの人にわからせる効果もあります。いわゆる高級ブランドの商品を身に付けていれば、商品自体の良し悪しのわからない人にも「リッチな人だ」と思われるでしょうし、流行の先端のブランドであれば「感度の良い人」「お洒落な人」と思わせることができるでしょう。
下手をすると「成金趣味」とか「ミーハー」といったマイナスの印象を持たれてしまうこともありますから話は簡単ではありませんが、他人の印象という面を考えると、商品の良し悪しを自分で判断できる人にとっても、ブランドを基準にして商品を選ぶことには意味があるわけです。
企業にとっては「財産」
「品質が高い」とか「センスが良い」、あるいは「地球に優しい」というようなことも含めて、プラスのイメージが多くの人に認識されるようになると、そのブランドは、商品を販売する場面ではもちろん、お金を借りたり社員を雇ったりするうえでも力を発揮します。高級ブランドに限らず、確立されたブランドは、それを展開する企業にとって大きな財産となるのです。
企業が、自社の商品や企業自体をブランドとして確立するためには、コツコツと良い商品を作り続けることが大前提です。それに加えて、いろいろなメディアを使ったり、アイドルやセレブの力を借りたりといった方法で、商品の良さを人々に認めさせていくことも欠かせません。これはなかなか難しいことですが、食べ物や身に付けるもの、家具、家電など、さまざまな分野の企業が重要な課題として取り組んでいます。
ブランドの貢献
企業とは、何らかの形で社会に貢献することで収益を得ていく存在です。しかし、ともすれば収益を追求するあまり、社会全体の利益に反して暴走するケースが少なくないのも事実です。そうしたケースでは、企業が長年努力を積み重ねて確立したブランドも一度に価値を失うことになります。
企業が自社のブランドを確立、維持していくには、社会に迷惑をかけるような不祥事を防ぐ体制の整備が不可欠ですし、それが定着すれば、社会貢献を重視する企業風土の醸成にもつながるでしょう。
「ブランド好き」というと少々軽薄なイメージがありますが、消費者のそうした傾向が企業にブランド重視の経営姿勢を取らせるように働くとなれば、それもなかなか意味のあることだと言えそうです。
関連レポート
■三つの競争力−脱・デフレを目指す事業戦略のために−
(日経BP社webサイト“Realtime Retail”連載 2005年6月16日公開)
■ブランドとしての通貨−メジャーの不安とローカルの胎動−
(読売ADリポートojo 2005年3月号掲載)
■物語の時代−現代日本の消費市場を読み解くキーワード−
(読売ADリポートojo 2004年11月号掲載)
■ブランドと企業戦略−期待されるデフレ克服のヒント−
(読売ADリポートojo 2002年12月号掲載)
■競争力を考える−三つの力と日本の課題−
(読売ADリポートojo 2002年3月号掲載)
|