今年、平成16年(2004)は、日本に近代的な小売産業が登場してちょうど100年目にあたります。この100年の間に、小売産業はさまざまな形で、進化・発展を続けてきました。今回は、その歴史を振り返ってみます。
近代化の象徴だった百貨店
日本の小売産業の歴史は、明治37年(1904)、東京日本橋の三越百貨店のオープンで幕を開けました。日本が近代化の道を突き進んでいた時代です。それに続いて、高島屋や白木屋(のちの東急百貨店)、阪急百貨店など、呉服商や鉄道会社が、次々に百貨店を開設していきました。
百貨店は、西洋風の大建築の中に多彩な商品を展示することで、欧米の近代的なライフスタイルを日本の人々に提示する「近代化のショールーム」の役割を果たしました。当時の百貨店は、単に必要なものを買い求める場というだけでなく、そこに行くこと自体が楽しい、今でいうテーマパークのような存在でもあったのです。
効率化、そして多様化へ
二つ目の転機になったのは戦後の高度成長期、スーパーマーケットの登場です。第一歩を印したのは昭和38年(1963)、神戸の三宮にオープンしたダイエーの1号店でした。チェーン店方式やセルフサービス方式で効率的な経営と低価格販売を実現したスーパーマーケットは、日本中が大量生産と大量消費による効率化を追い求めた時代の象徴となっていきました。
それに続いて生じたのが、私たちの暮らしが豊かになるのに対応した多様化の流れでした。1970年代にはコンビニやドラッグストア、ホームセンター、ファストフード、ファミリーレストランといった多彩な店舗が登場しました。1990年代になると、紳士服店やカジュアル衣料品店、家電量販店など、さまざまな大型専門店が成長しました。
時代は複合化へ
これからの新しい時代に向けた動きとしては、複合化の流れがあります。たくさんの専門店に映画館などのアミューズメント施設も加えた大規模な複合型の商業施設が、日本各地に登場してきています。いくつもの専門店が一体となることで、より魅力的な店舗づくりをしようという考え方です。日常的な買い物の場としても、スーパーマーケットとホームセンターを組み合わせた「スーパーセンター」や、スーパーマーケットを中心にドラッグストアやカジュアル衣料品店を組み合わせた「近隣型ショッピングセンター」と呼ばれるタイプなど、いろいろなバリエーションが生まれてきています。
登場以来2世紀目を迎える日本の小売産業ですが、その進化の動きは、まだまだ続いていきそうです。
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