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text019 2004年2月11日
「13歳のハローワーク」のこと

 村上龍氏の「13歳のハローワーク」(幻冬舎、Amazonの紹介ページへ)という本。結構話題になっているようですので、もうご存知の方も多いと思いますが、いわば「仕事の図鑑」といったような本です。医師や弁護士、あるいは最近人気のゲームプランナーやソムリエのようなメジャーな仕事もあれば、特効屋やバスプロ(ご存知ですか?)のように、かなりマニアックというか、専門的な仕事、さらには海女、シャーマン、傭兵にいたるまで514種類の仕事が、「・・・が好き」という切り口の分類で並べられていて、それぞれについて、どんな仕事なのか、どうやったらその仕事に就けるか、といったことが紹介されています。

 この本についてはAmazonの紹介ページで知ったのですが、たいへん興味をそそられ、早速購入しました。というのも、私自身、昨年あたりから教育の問題に関心が向いていまして、このサイトにもレポートをアップしていますが、そこに書いている理想的な将来像の出発点は、まさにこの本なのではないかと思えたからです。実際にこの本を手にしてみて、その思いはますます強くなりました。

 そのあたり、詳しくは下に記載したレポートをご覧いただければと思うのですが、要は、「どんな生き方をしたいのか」「どんな仕事をしたいのか」というのが、勉強するうえでの原点にあるべきではないかということです。勉強を通じて自分の適性と世の中のことを知ることで、「どんな仕事をしたいのか」という自分の志望を決めるのが第一ステップ。そして、志望を実現するために勉強していくのが第二ステップ。「13歳のハローワーク」は、この二つの段階のつなぎ目にあたるわけです。

 もちろん、一度決めた志望でも、気持ちが変わったり状況が変わったりというのは当然あるでしょう。もっと言えば、一度何かの仕事に就いてからでもやり直すことは可能です。そういう度ごとに立ち戻るのも、この本です。タイトルこそ「13歳の」となっていますが、決して子供や若い人専用の本ではなくて、もっと幅広い年代の人に役立つ内容だと思います。

 雇用の流動化、仕事の不安定化が決定的になった現代の日本では、20歳の人も40歳の人も、極端な話60歳や70歳でも、その時点での自分にふさわしい仕事を探して、それに挑戦できる社会になっていくのが理想だと思います。そんな社会が実現すれば、あらゆる年代の人に、この本のような「生き方のリスト」が必要になるでしょう。

 そういう思いから、実は私も、漠然とですが、この本と似たような企画を考えていました。ただ、私としては、それを本の形にすることは想定していませんでした。仕事探しの道筋は、人によって千差万別でしょうから、本のように一つの筋道で読ませていく媒体は向いていないと考えたからです。

 想定していたのは、webをベースにしたネットサーフィンやゲームの形式での情報提供です。仕事の紹介を軸に、自分の適正や趣味から志望を考えるプロセスと、その志望をかなえるための手順、勉強に関する情報提供を組み合わせてみようというアイディアです。

 もっとも、それを実現するには、とんでもないエネルギーが必要なことは明らかです。それで、どうしたものかと考えあぐねていた折に、この本がバーンと出てきたのです。正直「やられた」と思いましたが、実際にこの本を手にしてみて、そこに込められたエネルギーの凄さには、本当に圧倒されました。でも、この先の展開もまだまだあると思います。どういう形にせよ、私もその方向で取り組んでいきたいと考えています。

 ともあれ、この「13歳のハローワーク」、値段は少々お高いですが、まずは一度手にとってご覧になることをお薦めします。


関連レポート

■仕事選びの新機軸−「13歳のハローワーク」の波紋−
 (読売ADリポートojo2004年6月号掲載)
■若者たちの未来−不安の時代を超えて−
 (The World Compass 2003年7-8月号掲載)
■経済再建のカギは「教育」にあり
 (The World Compass 2003年3月号掲載)
■変質する受験−学歴ブランドの失墜と学力低下−
 (読売ADリポートojo2003年3月号掲載)
■これからの仕事−21世紀、豊かさは仕事から−
 (読売ADリポートojo2000年12月号掲載)


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