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text033 2007年4月14日
久々のオペラで

 1年ほど前、2006年3月にこのコーナーで紹介した(text029「スポーツビジネス研究とオペラ入門のこと」参照)、オペラ演出家のダリオ・ポニッスィさんのお招きで、3月26日に東京九段下のイタリア文化会館で開催されたコンサートに行ってきました。久しぶりのオペラでしたが、今回は、ダリオさんが主催されている、日本のプロのオペラ歌手を対象とした育成クラスの卒業公演で、13人の卒業生の皆さんが、それぞれオペラの一場面を演じるという内容でした。コンサートの内容など、ダリオさんのブログにいろいろと書かれていますので、のぞいてみていただければと思います。

ダリオさんの公式ブログへ

 私の方は、相変わらずの不勉強で、今回のコンサートでも、それぞれの場面の意味がいま一つ理解できないのが残念でしたが、全身に響いてくる歌そのものを感じるだけでも、十分に楽しめました。いっしょに行った仲間の一人は、「取りあえずは意味なんていいんじゃないの。体にも気持ちにも伝わってくるんだから。」と言っていましたが、それが正しい姿勢なのかもしれません。

 演奏会の後、テンションを上げたまま、いっしょに行った仲間とイタリアンのレストランで食事をしながら、深夜までいろいろと話しました。「今度は普通のオペラを観にいこう」とか「ダリオさんの次の公演にも行きましょう」というのは当然として、なかには「私も歌ってみたい」という人もいましたし、「ダリオさんと一緒に何かできないかなあ」という人もいました。この場合の「何か」というのは、お話しようとか、飲みに行こう、というようなことではなくて、「何かの仕事を」という意味合いです。いささか唐突な感じでもありますが、そこにいた仲間というのは、私と違って機動力も実行力もある人たちなものですから、「もしかしたら、もしかする」ということもあるかもしれません。すでにその席でも、ユニークなアイディアがいろいろと飛び交っていました。

 今回の演奏会でも感じましたが、私自身が出遅れている間に、日本のオペラのマーケットはすでに相当な広がりを見せているようです。純粋にオペラが好きで楽しんでいる人に加えて、教養として、あるいはファッションとしてオペラを鑑賞しに来ている人もいるのかもしれません。日本におけるオペラという「異文化」が、今後どのように展開するのか興味深いところですが、どういう方向に進むにせよ、今以上の広がりを想定するうえでは、きちんとした事業としての基盤が求められることになるんだろうなあ、という気がしています。現時点では、社会貢献的な資金がまだ期待できるかもしれませんが、特定の個人なり団体なりの善意に基づいた資金では、金額的に限界があるからです。その意味で、文化や芸術の視点と産業やビジネスの視点の両方から、今後の日本でのオペラの展開に注目していきたいと考えています。

 このサイトにも、文化や芸術と経済の関係ということで、一般論としての簡単な整理はアップしていますが(「芸術と文化と経済と」)、私の興味の中心である、国ごとの文化の特性と、その違いの経済的なインプリケーションという部分には、なかなか手を付けられずにいます。まあ、このあたりは焦らずにいろいろな機会をとらえて腰を据えて考えていきたいと思います。


関連レポート

■芸術と文化と経済と−経済の発展がもたらした濃密な関係−
 (読売ADリポートojo 2007年3月号掲載)
■感動消費の市場構造−尽きない欲求と広がるビジネスチャンス−
 (読売ADリポートojo 2006年6月号掲載)
■ショコラ−公共の利益と企業活動−
 (webマガジン“recre”連載「映画でみる私たちの経済」第6回)


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