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text028 2006年1月28日
サーチエンジンの限界

 このサイトは、株式会社アドミラルシステムのASJホスティング・サービスを使って運営しております。このサービスでは、サーチエンジンを通じてこのサイトにいらっしゃった方が、どんなキーワードでこのサイトを見付けられたかの記録を閲覧できるようになっています。その記録を見ていきますと、参考になるとともに、なかなか面白くもあります。

 正確にはわかりませんが、このサイトには、日々500人から600人くらいの方がサーチエンジン経由でいらっしゃっているようです。そこで使われているキーワードで目立つのは、やはり「高齢化」とか「デフレ経済」といった定番ネタや、「景気回復」「原油価格」「小泉改革」といったトピックス系です。なかには、「マクロ経済」とか「GDP」「アメリカ経済」など、基礎的な用語も並んでいます。また、「スマイルカーブ」とか「護送船団方式」「35兆円、市場介入」「デジタルデバイド」のように、最近ではあまり使われなくなった言葉で検索されている方も結構いらっしゃいます。学生さんでしょうか。

 いささか不思議なのは、「人生の墓場」というキーワード。結婚について書いたレポート(「結婚の経済学−ジューンブライド神話の背景−」)が引っかかるのだと思いますが、これが毎日のように登場しています。この言葉で検索される方が、一体何を目的とされているのか、ちょっと想像がつきません。それと、ごくまれにですが「海老餃子の作り方」で検索して来られる方がいらっしゃいます。「変わる家族、変わる食卓」という本を紹介したページにその文言があるためなのですが、これでいらっしゃった方は、おそらくはまったく目的に合わない内容に、がっかりされていることだろうと思います。万が一にでも、その偶然で、この刺激的な本に興味を持っていただけていたりすれば、とても嬉しいのですが・・・。

 私自身もサーチエンジンにはほんとうにお世話になっています。今となっては、“Google”なしでは仕事も日常生活もままならないくらいです。ですが最近、サーチエンジンによる情報収集の効率は、明らかに低下しているように思います。といっても、それは、サーチエンジンの機能が低下したわけではなくて、私にとって(おそらくは多くの人にとって)意味のないページが急増しているためです。blogの普及もその一因でしょうが、それ以上に、アクセス件数稼ぎのために自動生成されているらしい、無意味で紛らわしいページが急増していることの影響が大きそうです。

 また、検索結果として表示されるページの情報がいつのものなのか、そのページを開くまで分からない、あるいは開いても分からないケースがほとんどだという問題も、一段と深刻になってきています。オフィスや図書館のスペースには限界がありますが、事実上無限のスペースがあるwebの上には、古いデータ、古いページも廃棄されずに放置されがちです。サーチエンジンは、そうした「死んだ情報」まで律儀に集めてくれますが、そのウェイトは、これからさらに大きくなっていくでしょう。

 かつて、情報が氾濫し混沌としていたインターネットの世界を、情報発信・情報収集の場として機能するように秩序立てたのが“Yahoo!”のディレクトリ型ポータルであり“Google”のサーチエンジンであったわけですが、ここにきて、その秩序が揺らぎつつあるように思えてなりません。米国では、企業としての“Google”の快進撃が続いていますが、時代は既に、次なるwebの秩序の担い手を求めはじめているのではないでしょうか。

 そういうこともあって、今、私が力を入れている企画が、このサイトのトップページからもリンクしている「シンクタンク・ポータル“i-HUB”」のサイトです。これは、「経済や社会に関するちゃんとしたレポートを探している」とか「世の中の動きをしっかりと理解しておきたい」という方のための情報サービスを無償で提供しているサイトです。未来経済研究室を常時ご覧いただいている方には、まさにぴったりのサイトだと思います。

 “i-HUB”で日々紹介しているのは、素性のはっきりしたシンクタンクのレポートに限っていますし、いつ発表されたレポートかもちゃんと記載してあります(意外と、シンクタンク自身のサイトでも、いつの情報なのか分かりにくいケースが少なくありません)。そして、ここに登録されている1万本以上のレポートから、目的のレポートを、二階層のカテゴリーから探すことも、キーワード検索で探すこともできるようになっています(詳細は「ご利用案内」へ)。

 “i-HUB”サイトでは、検索システムの強化や、官公庁が発表している統計データを使いやすくするリンク集の開発など、機能とサービスの拡充を続けていく計画です。その展開は、このサイトでも随時ご紹介していきますが、まずは一度、使ってみられることをお薦めします。


関連レポート

■転機を迎えた情報優位の時代−未来のカギとなる生産と消費の融合−
 (読売ADリポートojo 2000年8月号掲載)
■新時代の情報流通
 (読売新聞媒体資料 2001年11月発行)


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