昨年来、流行語大賞にまで選ばれた「IT」に絡む仕事が多かったこともあって、そういう流行語と経済、社会の関係について考えるようになりました。
「IT」をテーマにした最初の仕事は、昨年の年頭に取り掛かって4月に出版した、竹内宏さんをトップとした旧・長銀総研のメンバーによる共著「これが『IT革命』だ」の執筆でした。これを書いていた時期には、「IT」という言葉に対しては、ただの軽薄な流行語だというような、やや突き放した印象を持っていたものです。
その印象が変わってきたのは、現実のビジネスのなかで、「IT」という言葉が、一種の「おまじない」というか「呪文」というか、何か人を動かす力を持ちはじめたためです。IT関連だというと事業企画が通りやすくなったり、今までどうしても合意を得られなかった業務改革が「IT対応のため」という殺し文句でOKになったり、というような話が、私の周辺でもずいぶんと聞かれました。「IT」そのものではなく、「IT」という言葉が、世の中に対して影響力を持ちはじめたのです。
その後、いわゆるネットバブルの崩壊や、eビジネスの限界が露わになったことで、言葉としての「IT」のパワーは弱まり、流行も下火になりつつあります。ですが、流行語と経済、社会の関係については、いささか興味深いテーマとして、私のなかに残されました。
そうしたこともあって、私が企画、編集のお手伝いをしている、わが三井物産戦略研究所の機関誌でも、流行語を扱う企画をスタートさせました。情報探索のプロ、サーチャーの仕事をされているライブラリアンの塩飽典子さんによる「流行語の経済学」です。この企画には、私も、情報提供などの形で参加していく予定でおります。このサイトからも、戦略研のサイトに掲載される「流行語の経済学」のページにリンクしていきますので、そちらもご覧いただければと思います(取りあえずは、この企画の発端となったレポート「流行語としての『IT』」にリンクします)。
私にとってのITブームはまだ続いているようで、6月末には経団連のミッションに参加して、米国のIT産業の視察に行くことになりました。折角の機会ですので、勉強してきたいと思っています。
関連レポート
■経済の流行語−言い訳の「バブル」、号令の「IT」−
(読売ADリポートojo2000年5月号掲載)
■流行語としての『IT』(文・塩飽典子)
(The World Compass2001年5月号掲載)
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