第一に、現下の経済不振が長期化し、経済が縮小均衡的な状態に陥ってしまうケースが考えられる。これは、ここでの試算の枠組みにおいては、失業率が高止まってしまうケースとしてとらえられる。ここでは、極端な想定ではあるが、2001年に各性別・年齢階層別の失業率がそれぞれ3倍に急上昇し、2050年までそのままの水準が続くケースを想定した。
第二に考えられるのは、趨勢的な成長力の低下に伴う企業の投資意欲の後退や、高齢化に伴う家計セクターの貯蓄超過幅縮小による資金制約のために企業の投資が抑制されるケースである。ここでは、極端な想定であるが、2001年に新設投資額のGDP比が延長ケースで想定した値(13.8%)の0.8倍(11.1%)に低下し2050年までその水準が続くことを想定した(なお、その低下分は、家計需要にまわると想定)。
第三に、労働生産性に対する資本装備率の弾性値αが低下するケースが考えられる。これは、科学技術、産業技術が今後どのような発展を遂げるかによって大きく左右されるため、将来の水準を見通すことが難しいが、ここでは、弾性値αを0.4に低下すると想定した。
以上の想定で試算した結果が下図の「悲観ケース」である(補論1の前提で求めた試算結果を延長ケースとして併せて記載している)。この場合でも、一人あたり家計需要は現状を上回る形になっている。ここでの想定が相当悲観的なものであることを考えると、高齢化時代に、私たちの生活水準が低下する可能性は極めて低いと判断できるだろう。
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