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ダイヤモンド・ホームセンター 2002年8-9月号掲載
「DHC DATA SCOPE」
離婚・再婚の増加で生まれるビジネスチャンス

 離婚件数の増加が止まらない。90年代に入って再度増加に転じた離婚件数は、90年代後半には、その増加ペースをさらに加速させている。2001年には約29万組、同年の婚姻件数が約80万組だから、単純に計算すると、結婚したカップルの3分の1以上が、いずれは離婚するということになる。もちろん、世代間の人口の違いなどがあるので、そう単純にはいえないが、もはや離婚は特殊なケースではなくなっていることは間違いない。

 再婚件数も増えている。婚姻件数のうち、新郎新婦のいずれかが再婚であった割合は、99年以降、2割を超えている。それでも、離婚件数ほどの増加ではなく、90年代後半の離婚件数の増加は、再婚予備軍の累増を意味している。再婚件数が今後も増加していくことは、ほぼ確実といえるだろう。

離婚件数と再婚件数の推移

 これらの現象の背景としては、従来の慣行に縛られない若い世代が、実際に家庭を築く年齢になってきたことが指摘されている。しかしその一方では、子供の自立や夫の定年を契機にした、高齢層の離婚も急増している。離婚・再婚の増加は、特定の世代、年代に限られたものではなく、普遍的な現象といえそうだ。

 これは、失敗に終わる結婚が増えたというよりも、失敗を我慢しない人が増えたための現象と考えられる。さらに言えば、我慢しなくてもすむ環境が整ったためといえるだろう。具体的には、社会一般の結婚に対する捉え方の変化、就労形態の多様化、家事代替サービスの発達といった動きである。

 こうした変化は、結婚を神聖視する人の目には、ゆゆしい事態と映るかもしれない。しかし、経済的な判断基準からいえば、生活を改善する機会の増加、あるいは、生活を変化させるためのコストとリスクの低下という意味で、望ましい方向への変化と評価できる。

 人々のライフサイクルの変化は、消費ニーズの変化につながる。離婚も再婚も当たり前、ということになれば、消費市場への影響は広範囲におよぶだろう。

 まず、離婚件数の倍の年間約60万人のペースで誕生している「戻り独身者」の市場は、マーケティングの対象としても意味のある規模になってきている。家庭内の非市場的な労働によって満たされてきた、育児、炊事、洗濯、掃除といった家事サービスに対するニーズが、離婚によって市場経済の場に顕在化する。

 発生する需要は、サービスだけではない。離婚や再婚は、生活パターンを大きく変える機会だ。新生活のスタートという意味では初婚も再婚も同じだし、離婚の場合にもあてはまる。そこでは当然、新居や家具、家電製品や食器類まで、さまざまな買い換え需要が発生する。逆に、中古家具の買い取りなど、旧生活を始末するためのサービスへの需要も想定できる。

 総じて言えば、離婚・再婚の増加は、需要を押し上げる要因となる。それも、流行やファッションに左右される需要ではなく、生活上の差し迫ったニーズに基づく需要である。その意味でも、日常生活に密着した商品、サービスを提供しているホームセンター各社にとって、望ましいトレンドということができるだろう。


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結婚の経済学−ジューンブライド神話の背景−
  (読売ADリポートojo 2002年6月号)


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