2000年に入り、日本経済の回復の足取りは、次第に確かなものになってきた。しかし、人々の雇用不安は依然として根強く、経済成長の大幅な加速は期待しにくい状況だ。
また、少し長い目で考えると、この先も、経済成長が加速する見込みは薄い。たとえ一時的に拡大ペースが上がったとしても、労働力人口の減少や環境面での制約を考えると、いずれはペースを落とさざるを得ないからだ。そう考えると、今私たちがやるべきことは、経済成長の回復を待つことよりも、低成長、あるいはゼロ成長という新しいビジネス環境への適応ということになる。
その際に、忘れてはならないのは、低成長は必ずしも停滞を意味しないということである。とくに、これからの時代は、経済の規模は拡大しなくても、技術の進歩や消費者の変質など、質的な変化は従来よりも遥かに目まぐるしくなるはずだ。流行語となった「IT革命」は、そうした「変化の時代」の訪れの一端でもある。
「変化の時代」の企業経営は、経済成長を追い風に企業規模の拡大を志向するスタイルから、時代の変化にあわせてビジネスを進化させ続けるスタイルに移行する必要がある。ビジネスの進化は、自然界と同様、競争と淘汰のメカニズムに支配される。進化をやめた企業は、規模の拡大の果てに滅んでいった恐竜のように、時代の変化に適応できずに淘汰されていくだろう。
もちろん、金融業も例外ではない。というよりも、もっとも急速な進化が必要な分野だとさえいえる。進化を加速するのは、新たな血、新たな遺伝子の流入だ。イトーヨーカ堂やソニー、トヨタなどの異業種企業、あるいは、eバンクのようなまったくの新設企業の参入は、金融セクター全体の進化を促す起爆剤となるだろう。ビッグバンの掛け声から三年、金融業は、いよいよ「進化の時代」へ踏み出そうとしている。
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