経済の先行きを予測するというのもエコノミストの仕事です。その際に、経済が悪くなるような予測をしてしまうと、「予測が当たってほしい」という思いと、「世の中良くなってほしい」という思いのジレンマに悩まされることになります。
私自身が今まさに、そうしたジレンマを味わいながら注目しているのが、アメリカ経済の動向です。というのも、もう一昨年になってしまいましたが、1999年の秋頃、アメリカ経済の好調も限界にきた、という予測を出していたからです。早ければ2000年の初めには個人消費のあたりから減速がはじまるというシナリオでした。
ところが、現実には、2000年に入ってもアメリカ経済は好調を維持し続けました。私なりにかなり自信のある予測だったこともあり、「なんで減速しないんだろう」という疑問とともに、人間のできていない私は、心のなかで、「まだ減速しないのかな」とか「早く減速しろ」などと、ついつい思っておりました。情けない話です。
そうした個人的な思いとは何の関係もなく、昨年の秋頃から、アメリカ経済の減速がはっきりしてきました。タイミングとしては半年以上もズレてしまいましたが、そこにいたる経路とその後の展開については、私の99年秋の予測が、そのまま当てはまると考えています。その頃に書いたもののうち、もっとも包括的なレポートをこのサイトにもアップしましたので、ご参照ください(下記)。
私は、アメリカ経済をソフトランディングさせるのは容易ではないとみています。そして、今回の長期好況の終焉は、もしかすると、アメリカだけでなく、資本主義全体が次の時代へ向けて大きく変化していくきっかけになるのではないかとも考えています。そのあたりについては、また追々、触れていきたいと思います。
関連レポート
■米国経済 快走が止まるとき−バブル末期の日本との対照−
(リテールバンキング1999年10月号掲載)
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